合理的な推定 HACCP編
前回、栄養成分表示は合理的な推定で行う計算で十分という話をしました。「合理的」を言い換えれば、「誰にも誤解を与えず理解してもらえること」ということになりましょう。この合理的推定は、使いようによっては非常に便利な考え方です。なぜならば実際に測定する必要はなく「◯◯であるに違いない」と推定すれば済むのですから。
私達の周りにも特に気にしないだけで合理的推定というのはあちこちで行われています。例えば「この線まで入れたらちょうど500mlになる」「乳酸50ml入れたらpHが4になる」「油温180℃で5分揚げたら中心温度が80℃になる」など、枚挙に暇がありません。
ところがこれらは本当でしょうか。たまたま容器に異型があって線までいれても500mlにならなかった。初発pHが3.8だったから乳酸入れたらますます外れてしまった。とんかつの厚みがバラバラで中心温度が80℃に到達してないものもあった。つまり条件を厳密に守らなければ合理的推定は成立しないことになります。
HACCPが制度化されて、そろそろ取り組み始めないとと勉強されている方も多いことでしょう。私もその一人で他の方のセミナーを聴講したり、教科書読んだりして勉強しています。しかし何でこんなにわかりにくいのだろう。なぜみんな難しいHACCP7原則12手順なんてとこから入るのだろう。これではHACCPに取り組もうとしても最初のハードルが高過ぎるだろう。いつもこう思っています。
HACCPの考え方を一言でいうとまさに合理的推定で「この通りに作っていたら◯◯になるに違いない」「◯◯だったら事故は発生しないに違いない」なのですが、この原則から説明してくれるHACCP専門家はまずいません。よくHACCPを小さな現場に取り入れるのは不可能と聞くけれども、なぜなのか考えてみると、合理的推定をするための条件を洗い出せていない、いや、そもそもその条件を守ることが徹底されていないのです。それでHACCP7原則12手順とか、記録取って保管しましょう、とか言ってもピンと来ないのです。
旭川食品産業支援センター長の浅野行蔵先生はHACCPの第一人者で流石に面白いHACCPセミナーをされます。浅野先生は「記録はウンコだ」とよく言われます。それを私なりに解釈すると『とんかつの厚みがバラバラなのに油温の記録とってもそれはウンコにもならんでしょう』もしくは『とんかつの厚みが一定なら自動制御の油温の記録をとったところでウンコでしょう』ということでしょうか。つまりHACCPの前にやることはあるのです。「最初に決めた通りに作りましょう」ということです。だからHACCP自体はそんなに難しいことではないのですが、その決められた通りにしましょうというのが難しいのかもしれません。
合理的推定が完全に出来れば、最終製品の抜き取り検査は不要になります。すると検査にかかる人手やコストを大幅に削減出来るのでHACCP様々ではないですか。という話で旧友と酒を酌み交わしながら盛り上がっていたところ「いや実測(検査)はなくならんで」と言われてしまいました。いくらHACCPを完璧にやったとしても万が一が発生した時のために検査したという証拠を残しておかねばならない。またHACCPが完全なものとは限らず逸脱する可能性もあるので最終製品検査は必要。というわけです。確かにHACCPが完全なら検査はいらないでしょうが、HACCPを完璧にするコストより検査するコストの方が安いかもしれません。アポロ宇宙計画のHACCPではないのだからもっと気楽に考えて、なーんちゃってHACCP、現状の管理方法とHACCPをミックスしたハイブリッド型HACCPでもいいんじゃないでしょうか。常識を逸脱した格外の想像力、が我々には求められているのです。
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